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2010 シチリアを巡る旅⑦

更新が遅くなりすみません。もう忘れ去られているかもしれない、「シチリアを巡る旅」の続きです・・・久しぶりのくせに長文です・・・


シチリアを巡る旅⑥はこちら


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7月9日(金)

朝8時前、お世話になったL'Approdo delle Sirene B&Bをチェックアウト。
今日はレンタカーを借りて、ここシラクーザから南西に1時間半ほどの距離にあるModicaモディカという町へ向かいます。

日本から予約していったHertzのレンタカーオフィスは、宿泊したB&Bの角を曲がったすぐの所にありました。

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3日間お世話になるFIAT panda君。私はマニュアル車の免許を持っていないので、運転は夫が担当です。地図とにらめっこしながらシラクーザの市街地を抜け、まるで高速道路のように大きな幹線道路をひた走り無事モディカに到着。

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急斜面に建物がひしめきあい、眼前に迫ってくるような町並みは圧巻!

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オレンジ色のテントが印象的なメルカート(市場)



ここモディカまでやってきた理由は、今回の旅の目的のひとつである「Antica Doiceria Bonajutoアンティカ・ドルチェリア・ボナイユート」を訪問することにありました。現在ポルコバッチョで取引・販売させてもらっている老舗のチョコレート店です。

11:30にシチリア在住のイタリア語通訳者Kさんと待ち合わせ、ボナイユートを訪れます。事前にアポイントを取っておいた4代目社長のRuta氏が快く出迎えてくれました。

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お店の外観

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店内

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ポルコバッチョでも取り扱わせてもらっているチョコレートが並んでいます。
試食用のチョコも山盛り!

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チョコレートの他にも数種類のお菓子が。こちらは見た目はオリーブそっくりのマジパンでできたお菓子。オリーブオイルに漬けているのでオリーブを甘くしたような不思議な味!

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店内ではカンノーロというリコッタチーズとピスタチオのクリームをサクサクの生地で巻いたシチリアのお菓子をその場で作ってくれて食べることができます。


さて、モディカは”チョコレートの町”といわれるほどチョコレートショップが多く点在し、Ruta氏によると現在なんと45社もあるそうです。

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町の案内図もチョコレート色!


そんなモディカのチョコレートは、16世紀にアステカ(現在のメキシコ)とシチリアを征服統治していたスペイン人によって伝えられた、原材料はカカオ、砂糖、スパイスだけという伝統的なレシピで作られてます。砂糖が乳化していない、ざらざらジャリジャリとしたチョコレートらしからぬ食感が特徴。

もともとアステカではカカオとスパイスのみで作られていたそうですが、スペインに伝わった時に砂糖を入れる今のレシピになったそうです。当時カカオは苦~い薬としての役割を果たしていたんですねー。

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カカオ。1人あたり1日に約4kgものカカオの皮を手作業で剥いていくそうです。

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これは1960年代まで使われていたカカオ用の石臼。石の下に石炭を置いて加熱し、カカオに含まれるカカオバターを溶かし、石棒でご~ろご~ろカカオを挽き、手作業で40分かけてペースト状に加工していたそうです。

今は機械式の石臼を使っているそうですが、摩擦の力で35℃ぐらいの温度になるので加熱する必要がないそうです。

その石臼でひいたのち、塊になったものを45℃に温め、砂糖とそれぞれのフレーバーのスパイス(バニラ、シナモンなど)を加えて撹拌するだけ。この製造工程のシンプルさが、カカオのもつ300種類ともいわれる香りを最大限に引き出しているのです。


”一般的に工場で大量生産されているチョコレートは油脂が入っているけど、どんな種類の油が何%入っているか明記する必要がないので、クオリティは不鮮明だ ”という話を聞き、一瞬”食の安全”という言葉が脳裏をよぎってしまいました・・・。

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成型前のドロっとしたチョコレート

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型に均等に入れていきます。

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砂糖のざらざらがまだ残っている状態

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職人さんが木枠をガタガタガタと小刻みに揺らすと・・・


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あら不思議!なめらかなチョコレートに変身


おそらくボナイユートの看板商品で、ポルコバッチョでも1,2位を争う人気のバニラ味とシナモン味ですが、この2種類だけなぜかかなり厚めの板状で、少し食べにくいとのお客様からのご意見を頂戴していました。

そのへんのことを尋ねてみると、この2種類は1880年の創業当時からある商品で、その当時はチョコレート=お菓子ではなく、チーズのように削るなどして料理の食材の一部として使われていたんだそうです。ウサギのチョコレート煮(!)など・・・シチリアでは大事なエネルギー源のひとつだったとのこと。

そのため食べやすさや見た目の良さなどは優先されず、大きな板状になった。あの形にはきちんと意味と歴史があったんだと、100年以上前の生活の様子をいろいろと想像してとても感慨深い気持ちになりました。


モディカだけで45社もあるチョコレートメーカーの中で、ボナイユートが地元の人々や観光客からも愛され続けている理由は、まず原材料の品質に対するこだわり。

アフリカにカカオの自社農園を持っていますが、もともとアフリカのカカオは質があまり良くなかったらしいのです。そこで現地と密にコンタクトを取り協力しあって栽培過程を厳重に管理し、徐々に良い品質のものを作れるようになったそうです。

カカオは質の悪い種だとローストの時間が長くかかり、質の良い種だと短くて済むので、環境(公害)にも配慮できるとのこと。

そしてRuta氏のチョコレートへの情熱と真摯で真面目な姿勢。お客様と信頼関係を築き安心して召し上がってもらうためには、生産過程を伝えることが一番大切、と。
この日もひっきりなしにお客さんが訪れていました。

私たちもRuta氏の熱心なお話を聞くことができ、本当に本当に勉強になりました。シチリアまで来なければ絶対に得られなかったものです。そして的確に素晴らしい通訳をして下さったsiciliacomeのKさん、本当にありがとうございました。

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真ん中が社長のRuta氏。スタッフとともに。



近年の技術の進歩で、独特の食感のチョコレートをよりなめらかに作れるようになったそうです。試食させてもらうと今までのものより確かに舌触りがなめらかになっています。

フレーバーも増え、レモンやカルダモン、黒糖入りなど・・・新作を今年の秋・冬には日本のお客様にもご紹介できると思います。伝統的な製法を守りながら常に進化し続けるボナイユートのチョコレート、ぜひ楽しみしてお待ち下さいね!



⑧に続く・・・
by porca | 2010-09-05 19:20 | シチリアの旅'10
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